今回、お話をお伺いしたのは、「第2回ジャパンSDGsアワード」で内閣総理大臣賞を受賞した、「㈱日本フードエコロジーセンター」の代表取締役、髙橋さん。
解説:
「ジャパンSDGsアワード」は、SDGs達成に資する優れた取組を行っている企業や団体を国は表彰するもので、中でも内閣総理大臣賞は、1社しか選ばれないめちゃくちゃ凄い賞なんです!
ジャパンSDGsアワード
どんな事業で表彰されたかというと、コンビニやスーパーで廃棄されてしまう食べ物を独自の技術で飼料化し、その肥料を養豚農家に安く供給するといったものなんです。
廃棄されて無駄になってしまうはずであったゴミが、養豚農家で必要な肥料になる訳ですから、まさにSDGsの理念にあったものということです。
図にすると以下のような流れになります。
そんなすごい会社が相模原市にあったなんて知らなかった!
今回は、そんなすごい会社「㈱日本フードエコロジーセンター」の代表取締役髙橋さんに、『どのような取組をしているか』『SDGsに対する思い』についてお話を聞いてきたよ!
今回のインタビューに答えてくださった方
㈱日本フードエコロジーセンター
代表取締役
髙橋 巧一さん
プロフィール
1967年 神奈川県生まれ。
1992年 日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年獣医師免許取得。
経営コンサルティング会社、環境ベンチャー、株式会社小田急ビルサービス環境事業部顧問を経て、 現在、株式会社日本フードエコロジーセンター代表。
2018年 一般社団法人 全国食品リサイクル連合会の会長に就任。
どんな取組をしているか?
―― 1日どのくらいの食品廃棄物を受け入れているのですか?
髙:日によって違いはあるけど、大体25t~30t程度です。
―― えー!単純にもったいないと感じてしまうのですが…
髙:もちろん私も「もったいない」と感じています。
ですので、食品廃棄物の発生抑制のために、どこの事業者からどれだけの廃棄物を受け入れたかを毎日記録して、データを事業者にフィードバックしています。
そのデータを基に事業者は生産調整を行うことで、食品ロスが減ればいいなと思っています。
また、皆さまに「もったいない」を感じでもらうために、見学の受け入れなども積極的に行っています。
―― 食品ロスがなくなってしまうと事業が成り立たなくなってしまう気がしますが…。
髙:それはSDGs的な考え方ではないですよね。
実際には、我々が提供したデータを基に食品ロスを減らした事業者が、他の事業者を紹介してくれることがあるんですね。だから今すぐ事業が成り立たなくなるということはありません。
―― でもいずれは…。
髙:それは我々が最も望むところです。
もともとの出発点が「食品ロスを減らしたい」という想いで始めた事業ですから。自分達の事業が社会課題を解決して、世の中の人々が少しでも幸せなれば、これ以上のことはありません。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、社会課題の解決に本気で取り組んでいくと、結果として事業としても成り立っていくんですよね。
―― 視察も積極的に受け入れてるみたいですが。
髙:国内はもちろん海外からも沢山視察に来ますね。実は海外からの視察や問合せに対応するために、英語が堪能な職員を採用しました。
―― すごいですね…。企業も視察に来るんですか?
髙 : もちろんきます。同業者に対しても技術も含めて全て公開しています。
―― なんと…。同じような事業者が増えると、ライバルが増えてしまうのでは…。
髙 : そういう風に考えたことはないですね。色んな企業にどんどん真似して欲しいです。実際にリキッド発酵飼料を作っている企業は増えてます。
―― 特許取得でロイヤリティが入るなんてことは?
髙 : もちろんありません。
―― ですよね…。
髙 : 穀物飼料は輸入に頼っているので、海外から日本に運ぶだけでもCO2を排出しますし、値段も安定しません。うちの技術がもっと広まって、世の中の仕組みが変われば嬉しいですね。
「食品ロスを減らしたい」という想いから始めた事業はSDGsゴール2「飢餓をゼロに」や12「つくる責任 つかう責任」に繋がっているね!
しかもその技術を無償で他の事業者にも提供しているなんてほんとに凄い!
その他のSDGsの取組
―― フードエコロジーセンターでは障害者の方も活躍しているということですが。
髙:ホントに大活躍していますよ。障害者の雇用先が少ないということだったので、それじゃあウチでといった感じで。
―― すごく簡単なことのようにお話されますね…
髙:実際に働いてもらって分かったことなんですが、障害を持った方のほうが効率よくできる作業もあるんですよ。
―― 例えばどんな作業ですか?
髙:パンと包装ビニールを分ける作業があるんですが、30分だけだと健常者の方が早いんですが、3時間やると障害を持った方のほうが早いんですよね。
障害者雇用というと少し大げさで、人それぞれに個性がある訳で、それぞれの個性に合った仕事をやってもらうことが大切だと思うんですよね。
「障がい者雇用」という視点はSDGsゴール8「働きがいも経済成長も」に繋がっているね!
「それぞれの個性に合った仕事をやってもらうことが大切」という視点は大切!
SDGsに対する思い
―― SDGsアワードで内閣総理大臣賞を受賞されて、変わったことはありますか。
髙:講演の依頼が増えましたね…。もちろん今までも食品ロスというテーマでの講演はあったのですが、今は SDGs について講演して欲しいという依頼が多いですね。
実際はやっていることも言っていることも前と変わってないのですが…。
―― SDGs に取り組んでいるという意識はあまりないのですね。
髙:肩肘張って「 SDGs 」という感じではないですね。今までも似たような取組はあった気がしますので、今回も一過性のものかなと少し斜に構えていたのですが、思ったより勢いがありますね。
もちろん理念や考え方は素晴らしいものなので、一過性のものとして終わらせてはいけないと思いますし、普及させるためにあちこちで講演したり取材を受けたりしています。
―― そのおかげで大忙しですね。
髙:確かに忙しいですね。でも好きでやっていることなんで、苦にならないですね。
―― 髙橋さんにとって SDGs とは。
髙:「幸せづくりの道しるべ」ですかね。多くの人が「世の中が良くなってほしい、みんなが幸せになって欲しい」という想いを持っていると思いますが、その期待に応えるためにはどのように行動したら良いのか、そしてどのようなサービスや商品を提供したらいいのか、それを示しているのが SDGs の17の目標なんですかね。
SDGsの17の目標は「幸せづくりの道しるべ」。
とてもいい言葉だね!
終わりに
最初は肩肘張って「SDGs」に取り組んできた訳ではなく、「世の中が良くなってほしい、みんなが幸せになって欲しい」という想いを持って行動することにより、結果的に SDGsに繋がってきた話が印象的でした。
それが結果的に、「ジャパン SDGsアワード」で内閣総理大臣賞を受賞するまで至っている訳ですから、本当に凄いですね。
皆さんもまずは SDGs をそんなに難しく考えずに、「世の中が良くなってほしい、みんなが幸せになって欲しい」という視点で、目の前のできることに取り組んでみると良いかもしれません。