今回お話をお伺いしたのは、食を通じて地域のコミュニケーションの活性化を目指す「フードコミュニティ」を運営する中臺(なかだい)博さんと幸江さん。
作り過ぎた野菜や貰ったけど食べきれない贈答品などを集めて、子ども食堂や生活困窮者に届ける活動をしています。
解説:子ども食堂とは
子どもやその親、および地域の人々に対し、無料または安価で食事を提供し、子どもの居場所づくりや孤食の解消、地域のコミュニティの活性化を目指す活動。NPOや地域の人たちが中心になり、日本全国に広がっている。
食品ロスの削減はSDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」のターゲットになっています。
また、生活困窮者に食糧を届けることはゴール1「貧困をなくそう」やゴール2「飢餓をゼロに」につながっていると言えます。
家庭菜園をやってる近所の人に、ゴーヤを100本貰って困った経験があります…。全部食べたけど。
もはや家庭菜園の域を超えている気もするけど…。そんなときはフードコミュニティさんに相談できるかも!それでは詳しくお話を聞いていくよ!
今回のインタビューに答えてくださった方
フードコミュニティ
中臺 博さん、中臺 幸江さん
プロフィール
相模原市に住んで30年以上。
地域との関わりはあまりなかったものの、定年退職した後に夫婦で地域活動実践講座に参加したことがきっかけで、野菜を子ども食堂に届ける活動を始める。
現在は活動の幅が広がり、様々な食材や日用品などを子ども食堂や生活困窮者支援団体に届けている。
どんな取組をしているか?
―― 具体的な取組の内容を教えてください
中:作り過ぎてしまった野菜、もらい過ぎた食品などを集めて、子ども食堂や、生活困窮者を支援している団体、施設などに届けています。
一般的なフードバンクでは日持ちのする食品を集めて、必要な方に取りに来てもらうのですが、私たちは野菜や食品を直接取りに行って、直接配るという活動をしています。
―― すごく大変な活動だと思うのですが、何故直接取りに行く、届けるということをしているのですか?
中:顔が見える関係というのがすごく重要だと考えていて、取りに行く、届けるという行為を通じて、コミュニケーションが生まれ、活動がよりひろがっていくと考えています。
私たちの活動は難しく言うと「余剰食品の有効活用」ということなんでしょうが、もともと日本には「おすそ分け」という文化がありました。最近では近所づきあいも減って、人と人とのコミュニケーションが減って、「おすそ分け」が減っているように感じます。「余剰食品の有効活用」と考えればもっと効率的にやる方法もあるとは思いますが、私たちは「おすそ分けのお手伝い」をしているという感覚で活動をしています。
―― 具体的にはどのようにマッチングをしているのですか?
中:食品が頂いたら、メール、フェイスブック、ラインで情報を流します。そうすると必要としている団体から連絡が来て、届けに行くといった形です。
――「おすそ分け」って聞くともっとアナログな方法で情報発信しているのかと思いましたが、SNSを活用しているとは…。恐れ入りました。
「おすそ分けのお手伝い」。何かいいですね~。SNSを活用してマッチングできるのも凄い!
活動を始めたきっかけ
―― 活動を始めたきっかけについて教えてください
中:地域活動実践講座に参加したのがきっかけです。
参加者の一人が畑をやっていて、作った野菜が自分の家では食べきれない、近所もみんな畑をやっているので、配りたくても配れないという話をされていました。
当時ちょうど子ども食堂が市内で増えてきた時期で、自分もお手伝いをしていたのですが、食材を仕入れるコストが課題でした。 そこでこれは「お互いの課題が解決できる」と思って、作り過ぎた野菜を子ども食堂に届ける活動を始めました。
―― 一般的なフードバンクだと缶詰など日持ちするものを扱いますが、始まりは「野菜」だったんですね。
中:今はフードバンク経由でいただいたお米や缶詰なんかも届けていますが、始まりは「野菜」でしたね。
―― でも野菜は日持ちしないですよね 。
中:そうなんです。だから妻(幸江さん)が一生懸命管理しています。
―― 幸江さん、かなり大変ですよね。
幸:本当に大変です。鮮度を落とさないために水を与えたり…。場所も取りますし…。
活動を通じて感じること
―― 活動を通じて感じることはありますか。
中:当たり前のことなんですが、食品ロスを「もったいない」と思う人が沢山いるということですね。
日本は食品ロス大国ですが、少なくとも個人レベルでは「もったいない」と思いながら、やむを得ず捨てているケースが多いのではないでしょうか。
そんな方々の気持ちに応える活動を続けていきたいと思っています。
――「Mottainai」は世界に誇る日本の言葉ですよね。
中:あとは「食の格差」が広がっていると感じることがありますね。
多くの食品が廃棄される一方で、今日食べる物にも困っている人がいる。そんな現実を感じます。
また、生活困窮者の中には調理ができない人もいるため、そういう人たちには缶詰や乾麺しか届けられない。そうなると栄養も偏るでしょうし、健康面にも影響が出ますよね。食品を届けるだけでは解決できない問題もあって、そういうことを総合的に解決するのが「SDGs」なんじゃないかな、と思います。
―― まさにその通りですね。一つの課題を根本的に解決するためには、他の課題にも取り組まなくてはならない。そして色んな人が協力し合うことで解決する、それがSDGsですね。
個人の「もったいない」という気持ちと、食べる物に困っている人の気持ちのつなぎ役になっているんだね!
市内の子ども食堂「ちゃお」さんへ食材を届けるところを取材させていただきました。
当日は新型コロナウィルスの影響で、残念ながら食事の提供は行われませんでしたが、代わりに近くの公園でパンやお菓子などを配布する活動をされており、皆さんの熱意に圧倒されました。
課題
―― 課題はありますか。
中:幸いにも食糧の支援は沢山いただいていて、最近は食糧以外の日用品なども受け入れて必要な人に配っています。問題はやっぱりスタッフ不足ですね。一緒に活動してくれる人が増えれば、もっと沢山の人に必要なものを届けられるますので。
あとは食糧を保管する倉庫が必要ですね。今は自宅に保管していますので、やっぱり限界があります。
―― 活動を手伝いたい、または保管場所を提供できるという人は、中臺さんに連絡すればいいですか。
中:そうですね。ホームページに電話番号とメールアドレスを公開していますので、連絡いただけばと思います。もちろん食糧などの提供も受け付けていますので、その場合も連絡をお待ちしています。
みんなも活動に参加してみよう!
終わりに
「おすそ分けのお手伝い」、そして誰もが持っている「もったいない」の気持ちに応える活動をする中臺さん。
こんな取組が広がることで、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会が実現するのではないでしょうか。
この記事をご覧の皆さんも、SDGsの達成に向けて、自分にできることから取り組んでみませんか?