今回、お話をお伺いしたのは、国際連合広報センター(UNIC)で知識管理を担当している千葉さん。
千葉さんは、国連寄託図書館のコーディネーター役を務めるとともに、SDGsを合言葉に、その他のさまざまな図書館ともゆるやかなつながりを広げています。
問題!
「国連寄託図書館」とは何でしょう!?
「図書館で好きな子に告白できなかった」というエピソードのことですね!
告れん!図書館。
おやじギャグ・・・
「国連寄託図書館」とは以下のとおりだよ!
解説:国連寄託図書館とは
国連寄託図書館とは、国連との契約のもと、国連の文書や刊行物を収受、所蔵し、人々の利用に供している図書館のことです。
国連に指定されて、国連の資料を扱っている図書館というのがあるということですね。
日本にもそんな図書館ってあるなんて、なんだかワクワクするね!
それでは、国連やSDGsと図書館の関係について詳しく話を聞いていくね!
インタビューの最後には、SDGsの現状についても聞いてみたよ!
国連広報センター
千葉 潔さん
プロフィール
1989年より、国際連合広報センターに勤務。
図書館や教育関係者とのパートナーシップ構築やウェブサイト運営管理などを担当。全国各地で国連やSDGsについての講演も数多く行っている。
同センターのブログサイトでも、SDGsと図書館の取り組みを伝えるストーリーを発信している。
**国際連合広報センター(United Nations Information Centre)は、ニューヨークに本部を置く国連事務局のグローバル・コミュニケーション局に所属し、国連とその活動に関する広報を行っている。日本を含めて、世界の約60か所に置かれている。
国連やSDGsと図書館の関係!
――国連と図書館はどういった関係なのでしょうか?
千:図書館は「記憶の機関」とも呼ばれ、さまざまな情報資源を収集、保存するとともに、それら情報を人々に提供するという役割を果たしてきました。
国連もまたそうした図書館の重要性を早くから認知し、世界の国々の主要な図書館を国連寄託図書館として指定してきました。
――なるほど。国連寄託図書館とはどのような役割を果たしているのでしょうか。
千:国連寄託図書館は、国連文書や刊行物を配布し、人々による国連資料へのアクセスを確保するためのパートナーです。
――そうなんですね。
国連寄託図書館は、世界や日本にはどのくらいあるのでしょうか。
現在、国連グローバル・コミュニケーション局(DGC)の下に置かれたダグ・ハマーショルド図書館が、世界の約140か国の350を超える図書館を「国連寄託図書館」に指定しています。
日本でも、国内の14の図書館が国連寄託図書館に指定されています。
――インターネットがなく、今と比べて情報へのアクセスが容易でなかった時代においては、そうした図書館の役割はとくに大きかったのでしょうね。
千:はい、今では、情報のデジタル化が進み、人々の情報の入手が容易になりましたが、図書館の重要性に変わりはありません。
情報のアクセス拠点としての重要な役割を担い続けながら、人々の交流の拠点やアクティブラーニングの場として、その存在意義を増しています。
――アウトリーチ拠点として、国連の期待に図書館がこたえ続けているということですね。
千:国連のパートナーはいまや、市民社会、企業、学術界、報道メディア、エンターテイメント業界など、さまざまなアクターに広がっていますが、図書館はその協力の内容を変えながら、国連創設当初からずっと長い間、パートナーであり続けてきたのです。
――国連の情報提供、啓発活動のうえでのパートナーということですね。
図書館はSDGsのゴール達成にどのように関係しているのでしょうか。
千:例えば、先ほどの情報へのアクセスで言えば、ゴール16の「平和と公正をすべての人に」の中に「情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する」といったターゲットがありますが、これは、まさに図書館にかかわることだと思います。
――なるほど。
その他のゴールとの関係はありますか?
千:図書館は学校教育や生涯教育でも大切な存在ですから、ゴール4「質の高い教育をみんなに」への役割も大きいと言えるでしょう。
また、最近では図書館が様々な企業や団体と連携していることも多く、これは、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」の行動だと言えます。
その他のゴールにも、さまざまな形で関係する図書館の活動がたくさんあると思います。
図書館は、国連創設当初からずっと長い間、パートナーであり続け、SDGsにおいても、ゴール達成のための重要な役割を担っているんだね!
身近な図書館が取り組むSDGs!
千:そうしたなかで、近年、国連広報センターとしては、国連寄託図書館を中核としながらも、そのほかの公共図書館や大学図書館、そして最近では、学校図書館とも、SDGsを合言葉にして、「ゆるやかなつながり」を広げています。
――自分の街の身近な図書館や学校の図書館がSDGsの達成のためにゆるやかなつながりを形成しているとしたら、すばらしいですね!
千:現在、国連広報センターと「ゆるやかにつながる」図書館は、全国で50か所近くあります。
相模原市立図書館もその一つで、すでに私たちのお仲間なんですよ。
――私たちの街の図書館が国連広報センターや他の図書館とSDGsを合言葉につながっているなんて、なんだか嬉しいです。
国連広報センターはそうした図書館とどんな連携をしているのでしょうか?
千:国連やSDGs関連イベントに関するご相談に応じたり、SDGsに関連する国連文書や書籍をご紹介したり、写真やパネルをご案内したり、参考調査のアドバイスをしたり、講師として伺ったりと、いろいろな形でご協力しています。
――様々な連携をしているんですね。
千:それから、1年に1回、国連寄託図書館の年次研修会を開催し、ゆるやかにつながる図書館の皆さんにも参加していただいています。
――国連寄託図書館の集まりに参加できるのは、学びにもなり、横のつながりも広がりそうですね。
千:最近では、互いにつながった図書館の皆さんの間で、自発的にSDGsをめぐる情報交換などがなされ、各館ともに活発にアイデアを練り、実施にうつしていらっしゃいます。
――素晴らしい!まさに、ゆるやかなつながりの目指すところですね。
千:今はまだ50館ですが、今後さらに、このゆるやかな図書館の輪を広げていけたらと思っています。
――それぞれの図書館で実施した具体的なSDGsに関する取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。
千:例えば、SDGs選書の取り組みがあります。
日本の図書館では日本十進分類法で図書が並べられていますが、それとは別にSDGsのゴールの17分類で特別選書し、閲覧室などに目立つように別置しているのです。
――面白い取り組みですね!
「もっとSDGsについて知りたいと思うけど、どの本を読めばよいか分からない。」「どのように行動すればよいか分からない。」という方も多いと思います。
千:図書館には、SDGsやそれぞれのゴールに関連する多種多様な書籍がたくさん置かれ、自らの行動を考えるためのヒントや気づきを与えてくれるものもたくさんあります。
――確かに、そうした宝ともいえる本が活用されていないのはもったいないですね。
千:SDGs選書などは、SDGsに関する情報を求める市民の皆さんに対する効果的な発信方法の一つだと思います。
実際、良書なのにも関わらず、それまであまり借りられなかった本を17分類した特設コーナーに置いた途端、その貸出率が上がりはじめたという報告もされています。
――その他にはどういった取り組みがあるのでしょうか。
千:その他、SDGs写真展の開催やSDGsに関するクイズやゲームを利用したイベントなどを開催しているという事例もあります。
最近は、電子書籍サービスを導入するところもでてきましたが、そのサービスでSDGs選書を紹介している図書館もあります。
――いろいろな取り組みがあるんですね!
千:それから、学校図書館などでおススメなのが、「SDGsブックトーク」という取り組みです。
――「SDGsブックトーク」とはどんなものなのでしょうか。
千:自分が読んで感銘を受けた本から、おススメ本をピックアップし、SDGsという視点を入れて他の人と紹介しあう対話型ゲームです。
――面白そうですね。
紹介される側は紹介された本を読んでみたいと思うきっかけになりそうです。
千:紹介する側も紹介しようと思って再度本に目を通すことで、その内容を頭の中で整理しなおしたり、SDGsに関連したあらたな気づきを得たりすることもできます。
昨年の図書館研修会で、皆さんにご紹介しました。
――ただ、現在のコロナ禍の中では、対面式のブックトークは実施が難しそうですね。
千:最近、先ほどご紹介した研修に学校図書委員として初めて参加してくれた、高校一年の女子生徒がこのブックトークをオンラインで実践することに積極的にチャレンジしてくれています。
――すごい行動力ですね!
オンラインで実施するのも楽しそうです。
千:オンライン上ならたくさんの人が物理的距離の障壁を超えて参加できますし、今後、オンラインのSDGブックトークが国内でどんどん広がっていくといいなと思います。
身近な図書館でもこんなにたくさんの取り組みをしているんだね!
相模原市立図書館も令和2年11月からSDGsの取り組みの一環として、「SDGsと図書館 ~あなたが変える未来~」を実施しているよ!
SDGsの現状!
――2015年に採択されたSDGsについて、その普及や取り組みの状況は、どうなっているのでしょうか。
千:国内では、ある全国紙が今年3月に実施したSDGsの認知度調査では、「聞いたことある」という人の割合が約3割。
その3割のうち、SDGsのことをわかっている人の割合は半数程度という結果がでています。
――確かに、SDGsの言葉は聞いたことがあっても、理解している人は少ないかもしれないですね。
千:今年はSDGsが始動してから5年目で、2030年の達成期限の年まで残すところ10年となり、国連はこの10年を「行動の10年」と宣言しています。
聞いたことがある、だけではなく、具体的に行動している人の割合が増えることが期待されます。
――SDGsの達成に向けて、現時点での進捗状況はどうなっているのでしょうか。
千:厳しい状況です。
国連が昨年発行したグローバルレポートがすでに、「私たちはSDGs達成の軌道に乗っていない」「このままでは達成が難しい」と訴えています。
このレポートのタイトルは「THE FUTURE IS NOW (未来は今)」。その序文で、グテーレス事務総長は、「未来は、私たちがいま何をするかで決まる」と述べ、行動の加速化を呼びかけました。
――なるほど。
千:そして今年、コロナ禍がその状況をますます厳しくしています。
例えば、絶対的貧困の根絶に向けた進捗状況などは、大きく後戻りしてしまいました。
――貧困が広がれば、衛生条件も当然悪くなりますし、食べるものも食べれない、紛争も増えるなど、その他のゴールにも負の影響が広がってしまいますね。
千:コロナ禍においてこそSDGs達成をめざす行動が必要です。
――多くの人が行動に移すために必要なことはなんでしょうか?
千:何よりも、私たち人間がもつ「想像力」や「共感力」を最大限に発揮することが必要なのではないでしょうか。
――なるほど。
取り残されがちな脆弱な人たちのこと、私たちからは遠く離れて暮らす国・地域の人たちのこと、今は目にすることができない未来の世界で生きる人たちのことにしっかりと思いを馳せることが必要ということですね。
千:行動においては、SDGsの大切な肝である、グローバルな諸課題とその解決を社会、経済、環境の三側面から統合的にとらえるという視点を忘れないことが大切だと思います。
また、それぞれの取り組みを進めるなかで、他者とのパートナーシップということを考えてみてもよいかもしれません。
――まずは私たち一人ひとりの想像力、共感力が問われていますね。
千:そういう意味で、図書館には、幅広く深い知識を与えてくれる本も、豊かな「想像力」や「共感力」を養ってくれる本もたくさんあります。
――図書館であれば、新しい本も古い本も、安価な本も高価な本も、ベストセラーもそうでない本も置いてあって、その場で読むことも、借りて読むこともできますね。
――コロナ禍のなか、社会のデジタル化が進み、図書館のサービスの形もいろいろと変容していくと思いますが、どのような形にしろ、SDGsの達成をめざし、未来に向けて、図書館が人々のために果たせる役割は大きいと思います。
「未来は、私たちがいま何をするかで変わる。」とても印象に残るメッセージだね!
SDGs達成に向けて、私たちも行動の加速化をしよう!
終わりに
身近な図書館が、様々なSDGsのゴールに繋がっていて、大きな役割を担っているという千葉さんのお話はとても印象的でした。
また、SDGsの達成状況を聞き、改めて危機感を持ちました。
まずは、皆さんも興味のあるゴールに関連する書籍を図書館で借りるなどして、読むことから初めてみてはいかがでしょうか?
「想像力」を働かせ、身近なことから行動に移してみましょう!
『読書習慣のある人』と掛けまして、『急な誘いを断る時』と解きます!
そのこころは?
どちらも、きょうよう(教養・今日、用)があります!
みんなの身近な図書館を活用して、SDGsに関する知識や教養を深めよう!