今回は株式会社モリサワのみなさんにお話しを伺いました。
「文字を通じて社会に貢献する」をモットーに、誰もが見やすいフォントを提供するとともに、様々な支援を通じて「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて積極的な取り組みを進めています!
突然だけどSDGsクイズ!「UDフォント」とはどのようなフォントでしょう?
これは簡単です。うどん(UDON)みたいに太くて見やすいフォントのことですね。
そうそう、細くてコシのあるフォントはSB(SOBA)フォント!
そんな訳ないよね…。UDはユニバーサルデザインの略なんだ!
解説:ユニバーサルデザインとは
年齢、性別、障害の有無、文化、人種など人々が持つ様々な個性や違いにかかわらず、はじめから誰もが利用しやすく、暮らしやすいように、まちや建物、もの、サービスなどをデザインするという考え方
なるほど。それじゃあUDフォントって簡単に言うと「誰もが読みやすい文字」ってことね。
その通り!それでは詳しくお話を聞いていくよ!
株式会社 モリサワ
松原 一幹さん
河野博史さん(左) 橋爪明代さん(右)
プロフィール
本社コーポレート統括部門
コーポレート統括部門長
兼コーポレート統括部部長
SDGsへの積極的な取り組みを実践し、創業100周年(2024年)に向けて、 当社の「文字を通じて社会に貢献する」という経営理念を実現すべく 取り組んでいます。
河野さん
サステナビリティ推進部
ダイバーシティ推進室
誰もが個性や価値観を尊重できる「ダイバーシティ推進」と 社会価値を提供し続ける企業であるための「サステナビリティ推進(SDGs)」に 取り組んでいます。
橋爪さん
営業企画部 公共ビジネス課
「伝わる」情報発信のお手伝いを自治体や学校の先生方にレクチャーしながら、 情報のユニバーサルデザインを広める活動をしています。
UD(ユニバーサルデザイン)フォント
ーUDフォントってどのようなものなのでしょうか?少し具体的に教えてください。
橋:簡単に言うと、障害のあるなしに関わらず、「読みやすく」「分かりやすく」「間違えにくく」デザインされた文字です。
ーなるほど。でも人によって「読みやすさ」って違うような気もしますが。
橋:そうですね。年代であったり、紙媒体なのかwebなのかなど、人や場面によってかなり違うと思います。そのためモリサワでは明朝体やゴシック体をはじめ、web用フォントなど様々なUDフォントを提供しています。
ーUDフォントはどのように開発しているのでしょうか?
橋:「読みやすさ」が作成者の主観にならないように、第三者である学術機関等と連携して研究し、客観的根拠に基づいた視点も取り入れて開発しています。
ーUDフォントの必要性ってどういうところにあるのでしょうか?
橋:一つは「読み間違い」を防ぐという点ですね。フォントには「イメージ」を伝える役割と、「情報」を伝える役割があると考えています。
ー「イメージ」を伝える??
橋:そうですね。チラシやアニメなどにおいて、「やさしい」印象の文字と「荒々しい」印象の文字では全体のイメージがかなり変わってきます。
ーなんとなく分かります。
橋:例えば最近話題のアニメの一部でモリサワでも提供している「闘龍」や「陽炎」というフォントが使われているのですが、アニメの世界観を損なわず、補う役割を果たしているのがわかります。
ー確かに書体によって雰囲気が大分変りますね。「イメージを伝える」ということがよくわかりました!
橋:一方でUDフォントでは「正確に情報を伝える」ということに焦点を当てています。例えば薬や食品の成分表示などで読み間違いが起こると、取り返しのつかないことになる可能性がありますよね。
ー 確かにそのとおりですね。UDフォントが様々な場面で使われるといいと思うのですが、普及に向けた取組などはされているのでしょうか?
橋:そうですね。最近では自治体や学校との連携を進めています。
ー 確かに自治体や学校において「正確に伝える」ことは重要ですよね。具体的にどのような連携があるのでしょうか?
橋:昨年は自治体との連携により、UDフォントの有益性の検証を行いました。
ー どのような検証を行ったのでしょうか?
橋:一般的なOS標準フォントとUDフォントの文章の読み比べを行いました。結果、全世代での「誤読の回避」、40歳代以上で「読みの速度向上」という効果が得られました。
ー それはすごいですね!
橋:誤読が減るということはミスの削減につながりますし、読みの速度が向上することで労働時間の短縮にもつながるのではないかと考えています。
ー フォントを変えることで様々な好影響があるんですね!
橋:そうですね。ただ、より効果的に情報を伝えるためにはUDフォントを使うだけではなく、レイアウトや文章などに様々な工夫が必要です。
ー 確かにそのとおりですね。
橋:モリサワでは「伝わる」情報発信を皆さまができるようにバックアップをさせていただいています!
寝てても読めるフォントは開発されないでしょうか?
される訳ないよね…。
カタログポケット
ー モリサワさんではフォントを提供する以外に「カタポケ(Catalog Pocket)」を展開されていますが、これはどのようなツールなのでしょうか?
橋:様々な紙のコンテンツ(冊子、リーフレット、広報紙など)をスマートフォンなどのデジタル機器で見ることができるサービスです。ちなみに相模原市さんの広報紙もカタログポケットで配信いただいていますよ!
ー なるほど。最近はスマホで情報を得る人が増えてますからね。
橋:そうなんです!
ー カタログポケットの特徴を教えてください。
橋:まずは英語をはじめ10の言語で閲覧できることですね。
ー 10言語とはすごいですね。日本語を読むことができない方にも情報が届けられますね。
橋:はい。更に文字の拡大表示や音声読み上げにも対応しているので、視覚障害の方、老眼や弱視で小さな文字を読むことができない方にも情報が届けられます。
ー まさに「誰一人取り残さない」というSDGsの理念に合ってますね。フォントの会社であるモリサワさんがこのようなツールを開発した理由を教えてください。
橋:多くの人に情報を届けたいという想いからですね。今の社会は情報が得られないことで不利益を被ることが多くあります。そのような人を一人でも減らしたいですね。
ー 他にもカタログポケットを使うことによるメリットはありますか?
橋:例えば広報紙などに掲載するために何枚も写真を撮影しても、紙面で使えるのは1~2枚ですよね。カタログポケットならスライドショー機能があるので、多くの写真を読者に届けることができます。
ー なるほど。自分が写った写真が採用されていないと寂しいですからね。
橋:他にも、ハザードマップや避難場所の情報をカタログポケットにアップしておけば、災害時に市のHPがダウンした場合でも、住民は情報にアクセスできるなどのメリットもあります。
ー 様々な使い方ができるのですね!ホントに誰一人取り残さないためのツールですね。
ランチのメニューを10か国語に訳してみたいです!ちなみにかつ丼は英語で何と言うのでしょう?
KATSUDONかしら・・・。
共生社会への取組
ー モリサワさんはパラスポーツ支援など、共生社会の実現に向けた取組にも積極的ですよね。何か理由はあるのでしょうか?
松:そもそもモリサワは、1924年に写真植字機を開発したところから始まっています。
ー 写真植字機??
松:これは文字をガラス版に印刷して下からライトを当てて印画紙に文字を印字する機械でして、当時としては画期的な機械でした。
ー とても興味深いのですが、説明をすると長くなってしまうので気になる方はこちらをご覧ください。
それがどのように共生社会に結びつくのでしょうか?
松:写真植字機を作っていた時代から、手が不自由な方のために足踏みの機械を開発するなど、障がいがあっても活躍できる社会の実現に向けて取り組んでいました。
ー そんな歴史があったのですね。
松:そうですね。UDフォントもそうですが、パラスポーツ支援など、当社の取組は創業者の共生社会に対する想いが原点で、その想いが現在まで引き継がれていますね。
ー それでは具体的なパラスポーツ支援についてお聞かせください。
河:2015年に日本障がい者スポーツ協会とオフィシャルパートナー契約を締結しました。その後、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーや日本車いすバスケットボール連盟のオフィシャルサポーターとして契約するなど、団体との連携を強化しています。
ー なんと!オリパラのオフィシャルパートナーだったのですね。
河:その他にも小学生の車いすバスケットボール大会への協賛や、パラ陸上競技の佐藤友祈選手と所属契約の締結も行いました。
ー 佐藤選手!パラリンピックでの金メダル、感動しました!
河:私たちもホントに興奮しました!パラスポーツへの支援を通じて、障がいへの理解が進み、共生社会が実現することを願っています。
モリサワさんの共生社会への実現へ向けた本気度が伺えるね!
SDGsについて
ー それではSDGsについてお聞かせください。
河:「文字」というのは情報伝達やコミュニケ―ションの手段であり、社会インフラの一部だと考えています。読みやすく、多くの人に伝わる「文字」を提供することによって、SDGsの目指す「誰一人取り残さない」世界の実現に貢献できればと考えています
松: モリサワの社是は「文字を通じて社会に貢献する」ですからね。
ー なるほど。本業でSDGsに貢献していて、さらにパラアスリート支援でもSDGsに貢献していますね。
河: その他にもSDGsのゴール4「質の高い教育をみんなに」に関連して、国連WFP協会の学校給食支援活動への協力を行っています。
ー モリサワさんと給食、一見あまり関係がないように思えますが。
河: 途上国では家の手伝いなどで学校に行けない子どもがいますが、学校で栄養価の高い給食が提供されることで、親が子どもを学校に行かせるようになるんですね。
ー なるほど。
河: 学校に行く事で読み書きを学ぶことができるので、学校給食への支援を通じて、世界の識字率の改善に貢献したいという想いを持っています。
ー 給食と文字、一見無関係に思えましたが、実はつながっているんですね。
河: また、さがみはらSDGsパートナーの一般社団法人さがみ湖森・モノづくり研究所さんとコラボして、相模原市の間伐材で作ったSDGsピンバッチを作りました。
ー ありがとうございます!間伐材の消費はSDGsの様々なゴールにつながります!
河: これからも、文字を通じてはもちろん、様々な角度から「誰一人取り残さない」世界の実現に向けて取り組んでいきます!
終わりに
本業でもそれ以外でも、常に「社会への貢献」を念頭に置いて活動するモリサワのみなさん。だからと言って気負った感じはなく、当たり前のようにお話しする姿が印象的でした。
お気づきの方もいるかもしれませんが、実はこのページも「UDフォント」を使っています!
みなさんも「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて、できることを考えてみましょう!
『共生社会』と掛けまして、『ホタテの養殖』と解きます
そのこころは?
どちらもちがい(違い・稚貝)を受け入れるところから始まります!
みんな違って当たり前!共生社会への理解を深めよう!