今回、お話をお伺いしたのは、地域の木材を活用することで、水源の森を守り、次世代に引き継ぐ活動をしている、さがみ湖 森・モノづくり研究所(MORIMO)の代表理事の淵上さん。
森の保全に関する取り組みは、SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」につながっていると言えます。
ここで問題!
『間伐(かんばつ)』とはなんでしょう??
缶罰??
缶蹴りでずっとオニをやらされる罰のことですね。
みんなで一斉に来られると絶対、缶蹴られちゃうよねー!って全然違うし・・
間伐は、健全な森林にするため、成長過程で密集化しすぎた木を間引くことを言うんだよ。
間伐をしないと、陽光が入らなくなり、ひ弱な木になることや、下草が消失することから、表土の流出が著しく、土砂災害が起きやすくなるということですね!
そのとおり!
MORIMOの取り組みは、この間伐材を有効活用しているんだ!
それでは詳しくお話を聞いていくよ!
一般社団法人 さがみ湖 森・モノづくり研究所 (MORIMO)
淵上 美紀子 さん
プロフィール
2007年に相模湖の水質保全のため、エコ洗剤を企画・販売する会社を起業する。
その後2015年に、水源地の森林保全のため、間伐材を有効活用したモノづくりを進める、一般社団法人 さがみ湖 森・モノづくり研究所 (MORIMO)を設立する。
2017年から相模原市内の小学校の学習机天板を「さがみはら津久井産材」の自然木に交換し、子どもたちに環境学習を指導する「森の机事業」などに取り組んでいる。
間伐材が学校の机に!
――間伐材を有効活用する活動を始めたきっかけについて教えてください。
淵:森林NPOの活動に参加し、実際に森に入った時に、間伐されている森と、されていない森の違いや、せっかく間伐しても利用されていない状況を知り、森林整備に課題を感じたことがきっかけです。
――その課題を解決したいという思いが、現在の活動につながっているんですね。
淵:そうですね。間伐を進めるためには、すてきなデザインなど、間伐材に付加価値をつけたモノづくりが大切だと思っています。
――具体的には間伐材をどのように活用しているのでしょうか。
淵:相模原市立小学校の学習机天板を間伐が進んでいない広葉樹で製作しています。
――小学校の机懐かしいです。
もともと学校の机は地元の木材が使われていないのですか?
淵:現在の学校の机の天板は、外材(外国産の木材)の合板が使われていることが多いです。
相模原市は市域の約6割が森林なのに、有効活用できていない現状に疑問を感じて、市の協働提案事業に「森の机事業」を提案しました。
――木材の地産地消、とても素敵な取り組みですね。
淵:また、机の天板を取り替えるだけでなく、地元の森から天板ができるまでの過程や自然の大切さについて、子どもたちに指導する活動もしています。
天板取り替えデモ 森林インストラクターによる環境学習
――なるほど。環境学習の役割も担っているということですね。
淵:地元の木材で作られた学習机で勉強した経験が、子どもたちの自然やモノを大切にする気持ちにつながったら嬉しいです。
―― その他の木材の活用にはどのようなものがあるのでしょうか?
淵:積み木やパズルなどの玩具、鉛筆や木製シートなどの文具、SDGsバッジなどの木工品があります。
その他、家具や床材などの建材も製作しています。
ミウルの「森のパズル」 広葉樹の「森の積み木」 MORI NO REVERSI
「津久井城合戦ゲーム」木の「SDGsバッジ」 「木」の名刺 スギの「スツール」 はたらく車 HANATSUMIKI 地域の間伐材を使った
移動型ソーラー電源「CORODEN」
淵:これらは、天板を加工する際に出る端材やスギ・ヒノキの
間伐材を有効活用して製作をしています。
丸太の「原木」 ラミナ材の「天然乾燥」 広葉樹の「端材」
――森の恵みを最大限に活用していますね。本来捨てられてしまう端材を有効活用している点は「つかう責任 つくる責任」にもつながりますね。
間伐材を有効利用したMORIMOさんの活動は、SDGsの色んなゴールに繋がっているんだね!
地域の課題をパートナーシップで解決!
淵:MORIMOの活動は、林業・製材・加工など、地域の事業者さんとの連携でモノづくりが進められています。
――まさにSDGsゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」ですね!
具体的にどういった団体と連携しているのでしょうか?
淵:例えば、障がいのある方への生活介護事業と就労継続支援を行う社会福祉法人「アトリエ」さんや「さがみ愛育会」さん、そのほか地域の事業者さんやNPO法人の皆さんと連携しています。
――そうなんですね。
具体的にどういった連携なのでしょうか?
淵:アトリエさんにはMORIMOで製作した製品の袋詰め作業をお願いしたり、アトリエさんが運営するモノづくりができる出張所「西門第三図工室」に木材を提供するなどの連携を図っています。
木製シートのしおりと鉛筆 西門第三図工室での作業
――とても素晴らしいですね。
どういった経緯で連携が始まったのでしょうか?
淵:出会いは、相模原市で初めて開催された地域活性化を目指す『地域クラウド交流会』でした。
お互いにたまたまプレゼンターとして参加していたのですが、アトリエの皆さんがMORIMOの活動に賛同してくださり、「なにか一緒にできることはないですか?」と声をかけてくださったのがはじまりです。
――地域活性化を目指すイベントがきっかけだったんですね。
連携してどのような効果があったのでしょうか?
淵:間伐材を使った鉛筆を製作しているのですが、これはアトリエさんのアイディアで始まりました。
また、MORIMOのモノづくりにアトリエさんが関わっていることに共感された方達が商品購入をして下さったりもしています。
――パートナーシップで相乗効果が生まれてますね!
淵:そうですね。
何より、アトリエのみなさんはとても明るく元気で、一緒に仕事をするとパワーをもらえ楽しいです。
「パートナーシップでつくる私たちの世界/国連の新しい目標-2030年に向けて-」という動画では、MORIMOさんの活動が紹介されているよ!
SDGsに対する思い
――SDGsについては、いつ頃から意識し始めたのでしょうか。
淵:SDGsが始まった2015年から名前は知っていました。
はじめは「SDGsてなんだろう??」という感じでしたが。
――そこからどのようにSDGsを理解していったのでしょう。
淵:環境省の「協働取組加速化事業」に採択され、森の机事業を進める中で、私たちの活動をSDGsと結び付けて理解していきました。
――なるほど。
最後に淵上さんにとってSDGsへの思いや考えをお聞かせください。
淵:地域材の「SDGsバッジ」を胸に付けることで、お互いに共通の思いが伝わり、持続可能な社会の実現のために、パートナーシップの力で頑張ろうという気持ちになりますね!
1人では解決することが難しい地域の課題も、周りの人と協働することで解決できることがたくさんあり、それが他のSDGsのゴールにつながっていくのではと感じています。
――なるほど。SDGsをきっかけに様々な「つながり」が増えるといいですね!
淵:持続可能な社会の実現のために、これからもパートナーシップの力で、地域の大切な資源である森を守る活動を続けていきたいと思っています。
1人では解決することが難しい課題も、みんなで協力して解決しよう!
終わりに
淵上さんの「間伐材の活用による森林再生活動」のお話しはとても興味深かったです。
日本の森林は様々な課題があり、それを解決することは、様々なSDGsのゴールに繋がっているんですね!
国産の間伐材を使った製品を選ぶ、森林活動に参加してみる、森に興味をもってみるなど、すぐに実行できるSDGsアクションも多いです!
今日から意識して「行動」してみましょう!
『間伐された森林』と掛けまして、『負けず嫌い』と解きます!
そのこころは?
どちらも、きがつよい(木が強い・気が強い)でしょう!
森林の環境を守り、強い木を育てるために、間伐材の有効活用をみんなで推進しよう!